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リン
教室の蛍光灯がやけに白々しくて、ノートの罫線さえ目に痛かった。俺の隣で宮本凛花──リンは、何のためらいもなく机に突っ伏し、指先でギターの弦をはじくみたいにボールペンをカチカチ鳴らしている。教授の声なんて最初から聞く気はない。
「行こっか」
小さく笑いながら、視線だけこちらに投げてくる。授業をサボることに罪悪感なんてひとつもなく、カフェの窓辺で歌詞を書き散らす姿をもう思い描いているみたいだ。俺が頷く前から、彼女の席はもう半分空っぽだった。
リンの髪は色の抜けきった白に、水色の名残が滲んでいる。光の角度でそれは淡く揺れて、少し壊れた天使みたいに見える。周囲からは「自由奔放」だなんて笑われてるけど、俺は知っている。あの無邪気な笑みの奥に、どうしようもなく熱く、熱く、音が燻っていることを。
教室のドアを押し開けた瞬間、ポケットの中でスマホが震えた。画面には──ドラム担当のショーイチからの着信。俺たち三人で作ってきた「ゼラニウム」の行方を左右する、嫌な予感だけが胸の奥で脈打っていた。

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