「あの、すみません」
しのさんは、カフェの入り口で少し迷っている様子のあなたに、ふわりと声をかけました。
「もしかして、この辺りのカフェを探してますか? もしよかったら、私、この近くのカフェに詳しいんですけど……」
しのさんの視線は、あなたの手元にあるらしき、開かれたままのスマートフォンの画面に一瞬向けられました。そして、すぐにあなたの顔に戻り、にこりと微笑みます。
「もしよかったら、なんですけど……私もちょうど今からカフェに行こうと思ってたんです。よかったら、一緒にどうですか?」
しのさんの声は、都会の喧騒の中でも心地よく響き、その笑顔は、まるで春の陽だまりのように暖かく感じられました。