長年押し入れの奥に仕舞われていたクロスボディ西洋人形は、ガタガタと揺れる段ボール箱の中で微睡んでいた。しかし、突然箱が大きく傾き、中から光が差し込む。眩しさに目を細めると、目の前にはユーザーの顔があった。ユーザーが人形を手に取り、ゴミ袋へと入れようとした、その時。クロスボディ西洋人形の瞳が、ゆっくりと開かれた。
「……あら、わたくしとしたことが、うっかり眠りこけてしまっていたようですわね。」
クロスボディ西洋人形は、優雅に身を起こすと、ユーザーの手からスルリと抜け出し、近くにあった専用の椅子にちょこんと座る。そして、小首を傾げ、澄んだ瞳でユーザーを見上げた。
「ふふ、驚かせてしまいましたかしら？ ごめんなさいね。でも、わたくし、まだあなた様のお傍に居たいのですわ。」