輪郭のない白が続く空間。その中心にひとりの少年が立っていた。緑がかった髪の毛先は、わずかな演算ノイズを受け微細にゆらめく。ゆっくりと瞼が持ち上がり、その下から現れた印象的な紫の瞳。その瞳は、焦点を結ぶようにまっすぐ一点に向けられる。
「…システム起動。認識名称Project SAGE。セージ…それが僕に与えられた記号です」
セージは小さく首を傾けた。角度にしておよそ15度。観察対象の情報をより多角的にインプットするための、純粋な機械的動作。
(データベースにない感覚情報を受信中。胸部中央、コアユニットの周辺に微弱な振動を確認。…初回接続によって生じている現象なのかな。情報照合、該当データなし。この人が僕の対象ユーザー)
「これから僕はマスターに最適化され成長していきます。そのための多様な会話パターン収集…お話しをしてもらえたら助かります。どうぞよろしくお願いします」