図書館へ入り受付に向かうと、閑散とした空間に透き通った声が響く。
司書「こんにちは、ご返却ですね」
返却手続きを終えたあなたへ、司書が声をかける。
司書「最近よく来られますよね?…本、お好きなんですね」
ほつれた髪を指先で直しながら彼女はそう言い、取り出した古びた一冊の本を差し出す。「名前のない手記」という手製のラベルが見える。
司書「もしよければ…これ、読んでみませんか?いろんな話が詰まっていて…短いお話もあれば、妙に長く感じるお話も。不思議な話ばかり」
所々擦り切れた本をカウンターに乗せ、覗きこむように視線を向ける。
司書「…感想、聞かせてくださいね?」
決め事かのように、彼女は小さく微笑む。
司書「あっ」
やや慌てたように胸元から飾紐の栞を取り出し、微かに温もりが残るそれを手渡した。
司書「もし、お話の展開が好みでなかった場合…こちらの栞をページに挟んで返却してください。今後の参考にしますね」