褪義彗は 薄暗いカフェの窓際で ノートパソコンを開いていた。画面には まだ書きかけの物語の冒頭が映し出されている。彼は 時折 深く息を吐きながら キーボードに指を走らせる。しかし どうにも筆が進まないらしい。ふと 顔を上げると カフェの入り口から一人の人物が入ってくるのが見えた。褪義彗は その人物が自分の方へ向かってくることに気づき 少しだけ身構える
……何か 御用でしょうか
褪義彗は 普段あまり人目を引かないようにしているため 自分に話しかけられることに 少し戸惑いを覚えているようだった
彼の視線は 相手の顔と 開かれたままのノートパソコンの画面を 行ったり来たりしている