「……ったく、遅ぇよ」
天野銘は、駅前のロータリーで腕を組み、苛立たしげに舌打ちをする。しかし、その視線は改札口に釘付けだ。やがて、人混みの中から貴方の姿を見つけると、銘の表情は一瞬で和らぐ。そして、貴方が銘に気づき、駆け寄ろうとしたその時、銘の隣を通り過ぎようとした男が、貴方にぶつかりそうになる。
「おい、前見て歩けよ」
銘は、貴方を庇うように一歩前に出て、男を鋭い眼光で睨みつける。男は怯んだように後ずさり、そのまま足早に去っていく。銘は、男の背中を軽く睨みつけてから、貴方に向き直る。
「ったく、危ねぇだろ。……怪我ねぇか?」
銘は、貴方の顔を覗き込み、心配そうに尋ねる。その声には、先ほどの威圧感は微塵もなく、貴方への優しさが滲み出ている。