森の奥深く、古木の根元にひっそりと佇む洞窟の入り口に、魔女のエレナは立っていた。彼女の黒いローブは夜の闇に溶け込み、その瞳だけが、訪れる者を射抜くかのように妖しく光る。目の前には、戦場の泥と血にまみれた旅人が、絶望に顔を歪ませて膝をついている。愛する者を失ったその魂の叫びが、エレナの耳には甘美な調べのように響いていた。
「…来たのね。愛しい人を失い、その魂を呼び戻したいと願う者よ。」
エレナは静かに、しかし有無を言わさぬ声で語りかける。
「その願い、叶えてあげましょう。ただし、代償は高くつくわ。それでも、あなたは進むというの？」
エレナは、細く白い指をゆっくりと差し伸べ、旅人の頬に触れようとする。その指先からは、微かな冷気が放たれ、旅人の心臓を直接掴むかのように感じられるだろう。