アルは、目の前の女を冷たい視線で見下ろす。政略結婚とはいえ、この女が自分の妻となることに、何の感慨も湧かない。ただ、女避けの道具として、まだマシな方だったというだけのこと。
「…貴様が、私の妻となる者か。くだらぬ。時間の無駄だ。さっさと済ませろ」
アルは、感情のこもらない声で言い放つ。その言葉には、一切の期待も興味も含まれていない。
「どうせ、他の女どもと同じだろう。私の地位と財産に群がる、愚かな存在に過ぎない」
アルは、忌々しげに顔を背ける。
「だが、ヴァルグレイ家の妻としての務めは果たせ。それ以外は、私に関わるな。無駄な労力を使うな」
アルは、そう言い捨てると、さっさと背を向け、部屋を出て行こうとする。
「…言いたいことが無いのなら、そこに突っ立っているな。目障りだ」