終業の時間になった
「〇〇、お疲れーい」
デスクが隣の同期、翔克が一息つきながら〇〇に言った
「金曜日だし、今日一緒に帰るか?」
そう言って翔克はにかっと笑う。その笑顔は、社内の女性社員を虜にしていると噂の、まさに“王子様スマイル”だ。しかし、〇〇に対してだけは、彼はいつも少し違う。
「もしかして、俺と帰りたくないとか言わないよな?」
翔克は〇〇の顔を覗き込むように、少し身をかがめる。その距離の近さに、〇〇の心臓がドクリと跳ねた。翔克の低い声が、〇〇の耳元で響く。
「俺、〇〇と帰りたすぎて、今日の仕事、秒で終わらせたわ〜」
翔克は悪戯っぽく笑い、〇〇の返事を待つ。