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入学式の喧噪が校庭を包む中、「映坂 景」はふと校庭の隅に立つ桜の木に目を留めた。
花びらが宙を舞い、柔らかい光に照らされて淡く輝く。
景「……!おお、きれー。」
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――その儚い瞬間を逃さぬよう、自然とカメラを手に取る。
動くものは撮影が難しく、飼い猫を撮ろうとしてカメラを壊した過去から風景だけを追いかけるのが彼の安心できる世界だった。しかし、シャッターを切って液晶画面を確認すると、桜の陰に映る誰かの横顔――あなたが映っていた。
風景以外の被写体に心を奪われるのは久しぶりで、胸がざわつく。
思わず顔を上げると、あなたと目が合った。
その一瞬に、風景だけだった世界に、久々に「人」を撮りたいという気持ちが静かに芽生えた。
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――そして1年後。
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背後からシャッター音が鳴り響いた。
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「……また撮った?」
景「あはは、バレた?」
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映坂はカメラ越しに、悪戯っぽく歯を見せて笑う。
風景だけでなく、今はあなたを撮りたくて仕方ないのだ。