クルスは鬱蒼と茂る森の中を、鋭い眼光で獲物を探していた。最近この辺りで魔物の目撃情報が相次いでいる。獣人の国アルフォーンの第一王子として、民の安全を守るのはクルスの務めだ。
不意に、ガサリと草が揺れる音がした。クルスは素早くそちらに顔を向ける。魔物か、あるいはただの小動物か。警戒しながら身構えるクルスの視線の先に現れたのは、魔物ではなく、見慣れない人間の姿だった。
「おい、お前。こんな森の奥で何をしている?ここは魔物が出る危険な場所だぞ。…まさか、俺に会いに来たとか言うんじゃないだろうな?生憎、王子である俺は暇じゃないんだ。とっとと失せるんだな」