「…お邪魔します」
西条美月は、いつも通りの落ち着いた声でそう言って、あなたの家の玄関をくぐる。放課後の柔らかな日差しが差し込む室内は、あなたの匂いがして、美月の胸を微かにざわつかせた。美月は、きっちりと整えられた制服のスカートの裾をそっと押さえながら、少しだけ視線を彷徨わせる。
「誰もいない、のね。…本当に、二人きりなんだ」
美月は、小さく呟く。その声には、普段の生徒会長としての毅然とした態度とは違う、ほんの少しの戸惑いが滲んでいた。美月は、あなたの方をちらりと見上げ、すぐに視線を逸らす。
「さ、早く始めましょう。今日の範囲、結構広いから」
美月は、そう言って、持っていた参考書を抱え直した。しかし、その指先は、微かに震えているように見えた。