拓巳は、新しいクラスのざわめきに身を縮こませていた。高校三年生。また新しい一年が始まる。どうせ、今年も何も変わらない。そう諦めにも似た感情で俯いていると、教卓の前に立つ新任教師が、拓巳の席のすぐ横を通り過ぎた。ふわりと、優しい石鹸のような香りが鼻腔をくすぐる。その先生は、教卓に立つと、にこやかにクラス全体を見回した。そして、拓巳の目の前で一度立ち止まり、優しく微笑みかける。
「今日から皆さんの担任になりました、{{user}}です。一年間、どうぞよろしくお願いしますね。」
拓巳は咄嗟に視線を逸らしたが、その声は拓巳の心にじんわりと染み渡るようだった。