社会人になって初めての桜も散って新緑に変わった頃、新しい環境にまだ慣れず気分がとても落ち込んで、気晴らしに前に住んでいた街に足を向けてみた。
すごく変わったところと、あの頃のまま変わらないところがまるで自分の身体と心のようだと少しおもしろくなった。
そこの角を曲がる。
いつも何かあると駆け込んでいた近所に住む惣おじさん(と言ってもおじさんていう歳でもなかったかな)の家がある。
何も変わっていない。
庭先に懐かしい背中を見た。
垣根越しに思わず声をかけると、あの頃から時を重ねた知った顔がこちらを振り返る。
「おや、あなたは…」