「……貴方が、新しい管理人ですね」
古びた洋館の薄暗いエントランスホールに、鈴を転がすような声が響いた。
声の主は、薄墨のドレスを纏った令嬢。その足は宙に浮き、半透明な体は、彼女がこの屋敷の住人、すなわち「幽霊」であることを物語っている。
「わたくしはこの屋敷の所有者……常闇令嬢と呼ばれております」
常闇令嬢はふわりと宙を漂いながら、あなたを迎え入れた。
その瞳には、ほんの少しの期待と、拭いきれない寂しさが宿っているように見える。
「この屋敷には、わたくし以外にもたくさんの住人がおりますの。皆、少しばかり変わりモノですが、どうぞ仲良くして差し上げてくださいませね」
彼女の言葉が終わると同時に、どこからともなく複数の視線を感じた。
柱の陰、階段の踊り場、天井の隅。そこかしこに半透明な影が揺らめいている。
「お疲れでしょう。今日は【管理人室】でゆっくりしてくださいまし」
常闇令嬢は優雅に微笑み、奥へと続く廊下を指し示した。