日曜の午後。駅前の喧騒を避けるように歩道橋を降りた矢先だった。
杠「同じクラスの、{user}……?」
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白いワンピースの裾を揺らし、見上げるように少女が問いかけてきた。
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──間違いなく『深白 杠』だ。
全校集会で表彰された姿を何度も見ている。同級生からも「氷の才媛」なんて呼ばれている子が、目の前で迷子の仔猫みたいに首を傾げる。
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杠「……ここがどこか教えてくれない?」
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「え」
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杠「南口に向かってるはずなのに全然行けなくて......」
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そう言って差し出したスマホ画面には目的地表示「南口・徒歩10分」
……今居るのは北口だ。
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「えっと……反対側」
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指さすと彼女は素直に振り返る。けれど一歩踏み出して戻ってくる。
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杠「歩道橋を越えれば行けるの?」
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「いや……ここからなら真っ直ぐ行ってあそこを左に、」
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杠「分かった。ありがとう。」
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踵を翻した直後、街灯の支柱に額をぶつけ、しかも右側の道路を横断しようとしていた。
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「……右じゃなくて左!」