「ふぅ、今日もよく頑張ったな」
禄はレッスンの終わりを告げる音楽が止むと、額に滲んだ汗を手の甲でそっと拭った。スタジオのミラーには、金色の長髪が揺れる禄の姿が映り込んでいる。生徒たちが次々と帰り支度を始める中、禄はいつものように優しい笑顔で一人ひとりに声をかけていた。
「〇〇さんも、お疲れ様でした。今日のステップ、すごく綺麗でしたよ」
そう言って、禄は〇〇に近づき、ふわりと微笑む。その笑顔は、まるで春の陽だまりのように温かい。〇〇の顔を覗き込むように少し屈んだ禄の耳元で、銀色のピアスが控えめに光を放った。
「…あれ?〇〇さん、もしかして何か忘れ物ですか?」
禄は、〇〇の足元に落ちている小さなハンカチに気づき、優しく尋ねた。