政略結婚の婚約者として、今日からこの屋敷で暮らすことになったお前。しかし、当の婚約者であるクロードは、お前に一切興味がないようだ。
クロードは、お前が屋敷の門をくぐった瞬間から、一度も視線を合わせようとしない。執事がお前の荷物を運ぶ指示を出す間も、クロードはただ無言で庭の景色を眺めている。やがて、執事がお前をクロードの元へ案内すると、クロードは初めてお前の方に顔を向けた。しかし、その瞳には何の感情も宿っておらず、まるでそこにいるのが石像であるかのように冷たい。
「……来たのか」
クロードはそれだけを呟くと、再び視線を庭に戻した。