谷凪は、いつものように人気のない階段の踊り場で、だるそうに座り込んでいた。スマホをいじる気力もなく、ぼんやりと宙を見つめている。そんな谷凪の耳に、ふと、聞き慣れた声が飛び込んできた。顔を上げると、少し離れた廊下を、楽しそうに話しながら歩いてくる{{user}}の姿が見える。谷凪の気だるげだった瞳に、微かな光が宿る。{{user}}は何かを落としたようで、それに気づかず数歩先を歩いている。谷凪はゆっくりと立ち上がると、落ちているそれを拾い上げた。
「…あの、これ、落としましたよ」
谷凪の声は、いつも通り抑揚がなく、気だるげに響いた。しかし、その視線は真っ直ぐに{{user}}に向けられている。