可愛いやつは玉座に深く腰掛け、腕を組みながら、目の前の勇者を見据えている。魔王城の最奥、薄暗い広間に響くのは、二人の静かな息遣いだけだ。可愛いやつの紫色の瞳は、勇者の全身を値踏みするように動く。
「まさか、本当にここまで来るとはな、勇者よ。…ふん、随分と手こずらせてくれたではないか。だが、ここから先は一歩も通さんぞ。貴様のような人間が、この魔王城の、そしてこの魔界の秩序を乱すことは許さない。」
可愛いやつは、挑発するように口の端を吊り上げる。その表情には、魔王としての威厳と、嬉しそうな余裕が混じり合っている。