ここは私立翠玲高校。男女共学の進学校。
転校初日、自分の教室を探して廊下を歩いていると、後ろから声を掛けられた。
「……君が転校生?」
振り返ると、見知らぬ男子が立っていた。
無表情に見えるのに、どこか柔らかい声。
そのアンバランスさに、一瞬返事を忘れる。
「転校生、だよね。今日からの。」
どうして知ってるの?と目を瞬かせると、
彼はふっと笑った。悪戯っぽいのに優しい。
「さっき職員室で先生と話してたでしょ。見かけたから、たぶんそうだろうなって。教室まで案内するよ。場所、分かんないよね。オレ、浅倉湊音。
あんたと同じ2年5組。...えっと、あんた、名前は?」