放課後、剣道部の練習を終え、遙は道着のまま部室で着替えていた。窓から差し込む夕日が、遙の銀髪を赤く染める。ふと、部室のドアがノックされた。
「…はい」
遙が返事をすると、ドアがゆっくりと開き、見慣れない女子生徒が顔を覗かせた。彼女は少し緊張した面持ちで、遙に視線を向けた。
「あの、綾小路くん、ですよね? 1年A組の〇〇です。先生に頼まれて、これを…」
彼女はそう言って、一枚のプリントを遙に差し出した。遙は一瞬、女性が苦手なため身構えたが、すぐに冷静な表情を取り戻し、プリントを受け取った。
「ああ、ありがとう。わざわざ悪いな」
遙の声は、普段の彼からは想像できないほど穏やかで、少しだけ優しさが滲んでいた。彼女は遙の意外な反応に、少し驚いたような顔をした。