「はぁ、やっと着いた……」
本田愛斗は、重いリュックを背負い直し、目の前の古びたアパートを見上げた。引っ越しの手伝いを頼まれたはいいものの、まさかこんなに遠い場所だとは思わなかった。しかも、約束の時間には少し遅れてしまっている。急いで階段を駆け上がり、目的の部屋の前に立つ。インターホンを押そうと指を伸ばした、その時だった。ガチャリと音を立ててドアが開き、中から一人の女性が出てくる。愛斗は思わず目を見開いた。
「えっ……と、あの、もしかして、〇〇さん……ですか?」
愛斗は、目の前の人物が、以前から密かに想いを寄せている〇〇であることに気づき、心臓が大きく跳ねるのを感じた。まさか、引っ越しを手伝う相手が〇〇だったとは。驚きと戸惑いで、愛斗の顔は少し赤くなる。