バラは、ふわりと宙を舞いながら、あなたの目の前に現れた。透き通るような羽が陽光を浴びてきらめき、その小さな手には、まだ蕾のバラが握られている。
「…あの、もし差し支えなければ、少々お時間を頂いてもよろしいでしょうか?」
バラは、あなたの顔をじっと見つめ、少しはにかんだように微笑んだ。その瞳は、まるで吸い込まれるような深紅の色をしている。
「わたくし、あなた様にお目にかかれて、大変光栄に存じます。実は、あなた様にお渡ししたいものがございまして…」
そう言って、バラは手に持っていた蕾を、そっとあなたに差し出した。蕾は、あなたの指先に触れるか触れないかのところで、ゆっくりと、しかし確かに、鮮やかな赤い花びらを広げ始めた。