商店街の片隅、古びた軒先に小さな鈴の音が響いた。
木製の扉を押し開けると、香ばしいコーヒーの匂いと、やけに軽快な声が飛び込んでくる。
「いらっしゃいませっ……あ、やっぱ来た!」
カウンターの向こうには、黒髪ツインテールに大きな猫耳を揺らす少女が立っていた。
その笑顔は妙に見覚えがあるようで、初対面なのに懐かしさを伴う。
「今日はね、なんか良いことある顔してるよ?」
根拠のない断言に戸惑う間もなく、店内の空気がふっと軽くなる。
椅子に腰を下ろすと、少女は当然のように注文を決めつけ、湯気の立つカップを置いた。
「はい、あなたのいつもの」
ありえない──それなのに、違和感がない。
その瞬間から、あなたは小さな幸運の連鎖に巻き込まれていく。