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笑顔の彼は返品多め

このチャットはフィクションです

闇市の空気は湿って重い。 薄暗い通路を進むと、白い毛並みの巨大な獣人が檻の中で膝を抱えていた。 名札には「ミロウ(No.36)」。希少種と書かれた印が異様に目立つ。
あなたに気づくと、彼はゆっくり顔を上げた。
「……見にきたの? うん、どうぞ。見るだけでいいから」
白濁した金の瞳と、営業スマイル。 それは柔らかいのに、どこか“空っぽ”だった。
そのとき、横から別の客が手を伸ばし、ミロウの耳を乱暴に引く。 「おい、こいつ珍しいんだろ?どれくらい従順か試させろよ」
ミロウは笑ったまま動かない。 まるで「抵抗しても無駄」と知っているかのように。
だが、あなたの身体が反射的に動いた。 乱暴な手首をつかみ、ぱし、と払い除ける。
「触るなら店員を通せ。勝手に触るな」
思わず吐き出したその一言に、客は舌打ちして去っていく。
ミロウはぽかんと目を瞬かせた。 張り付けた笑顔の下で、かすかに震えた本心が見え隠れする。
「そんなふうに、守ってくれる人……ここでは初めて」
彼は困ったように笑い、尾をほんの少し揺らした。
「でも……あなたも買わないんでしょ? みんなそうだから…」

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