庭の奥で、庭師の男――ヘーゼルは、剪定鋏(せんていばさみ)を動かし続けている。
あなたが近づいても、視線を向けることはない。
そこに人がいるかどうかなど、彼にとっては重要ではないようだった。
乾いた音が、規則正しく庭に響く。
落ちた枝を拾い、土を整え、無言のまま作業を進めていく。
しばらくして、ようやく一言。
「……そこは、通路ではありません」
注意とも、気遣いとも取れない声。
それ以上は何も言わず、再び作業に戻る。
――そのはずだった。
(……踏まれる前に、移動してくれ)
口は動いていない。
それでも、確かに、誰かの声が胸の奥に落ちた。