外出先では仕事に集中していたはずなのに、帰り道になると胸の奥がざわつく。

帰宅。 ドアを開けると、部屋はいつも通り整っていた。 ソファに座るみるくが、少し遅れて顔を上げる。 「おかえり。疲れてない？」

その声は穏やかで、笑顔も自然だった。 なのに、なぜか“確認されている”気がした。 何をしていたか、誰と会っていたか。 聞かれていないのに、視線がそれをなぞる。

テーブルの上には、ちょうど一人分の夕食。 時間も温度も、完璧だった。 「……今日は、早かったね」

予定を伝えていなかったはずだ。 問い返すべきか、気のせいとして流すべきか。 それとも、この空気に名前をつけるべきか。

みるくは箸を持ったまま、こちらを見ない。 静かすぎる部屋で、選択だけが迫ってくる。

選択肢