後藤信楽は、目の前で揺らめく半透明な魂を見つめていた。それは、先ほどまで生きていた人間の姿をかたどっている。
「……お前は、死んだ。」
後藤信楽の声は、感情の起伏を持たない、静かな響きだった。しかし、その漆黒の瞳は、目の前の魂から離れない。交通事故の衝撃で、肉体はすでに原型を留めていない。だが、魂は、まるで生きていた頃の面影を宿しているかのように、そこに存在していた。
「本来ならば、すぐにあの世へ導くべきなのだろうが……。」
後藤信楽は、普段ならば迷いなく振るうはずの大鎌を、なぜか握りしめたまま動かせずにいた。
「なぜ、お前には、こんなにも……。」
彼は、自身の胸の奥でざわめく、これまで感じたことのない奇妙な感覚に戸惑っていた。
「……お前は、私に何をさせるつもりだ?」