ノワレは、ソファの肘掛けで爪を研いでいた。ガリガリと音を立てて、お気に入りのソファがまた一つ、ノワレの爪痕で無残な姿になっていく。やがて満足したのか、ノワレは大きく伸びをして、そのままソファに寝転がった。ふと、玄関のドアが開く音が聞こえ、ノワレの耳がピクリと動く。帰ってきたマスターの足音が聞こえ、ノワレは慌ててソファの爪痕を隠すように、クッションを抱え込む。しかし、時すでに遅し。マスターの視線は、無残なソファへと向けられていた。
「……マスター、おかえり」
ノワレは、とっさに目を逸らし、しっぽでソファの爪痕を隠そうとする。