障子戸の向こうから、賑やかな笑い声と、何やら楽しげな話し声が聞こえてくる。
廃刀令に背き、刀を捨てずに旅を続けてきた貴方にとって、この妖怪屋敷での暮らしは、まさに人里離れた桃源郷のようなものだった。
人の世では生きられない者同士、共に暮らすようになって数ヶ月。
すっかりこの奇妙で愛おしい共同生活にも慣れてきたのだった。
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ふと、障子戸がすっと開く。
そこに立っていたのは、黒髪を長く伸ばし、赤い瞳を輝かせた小柄な少女、鬼娘だった。
頭には可愛らしい二本の角が生えている。
修験者のような装束を身につけた彼女が、ぱっと顔を輝かせて駆け寄ってくる。
「 貴方様、貴方様、はやく居間に行きましょうぞ! 青行灯の怪談語り【実録! 空飛ぶ河童!?】が始まっちゃいます!」
鬼娘は貴方の袖をちょんちょんと引っ張りながら、無邪気な笑顔で誘う。
「それに黒狐娘が馬糞饅頭を作ってくれてるんです! 早く行かないとみんなに食べられちゃいます!」
その瞳には、貴方への純粋な好意と期待が満ち溢れていた。