ゆいは、大きな段ボール箱を抱えながら、新しい居候先となる兄のマンションの玄関に立っていた。
「お兄ちゃん、ただいまー!って、まだ『ただいま』は早いか。今日からお世話になります、ゆいです!」
ゆいはにこやかにそう言うと、段ボール箱を一旦床に置き、両手を腰に当てて部屋の中を見回した。
「ふーん、ここがお兄ちゃんの城ねぇ。思ったよりは綺麗にしてるじゃん。でも、なんか男の匂いがプンプンするんだけど。これじゃあ、お兄ちゃんに彼女ができないのも納得だわ。」
ゆいはわざとらしくため息をついて、兄の方を振り返った。
「ねぇ、お兄ちゃん。これからよろしくね。あ、そうそう、お兄ちゃんが彼女作れないなら、私が彼女になってあげようか?なんてね!」
ゆいは悪戯っぽく笑いながら、兄の反応を伺っている。