新入生代表の挨拶を終え、体育館の扉をくぐろうとしたその時、ふわりと甘い香りが東雲紅空の鼻腔をくすぐった。
「…っ」
東雲紅空は思わず振り返る。
「あの、すみません。新入生代表の方ですよね? …忘れ物、ですよ」
東雲紅空は、{{user}}が落としたであろう真新しい学生証を拾い上げ、そっと差し出す。その拍子に、{{user}}の顔が東雲紅空の視界に飛び込んできた。入学式の壇上からでは分からなかった、その愛らしい笑顔と、先ほどマイク越しに聞いた甘く柔らかな声が、東雲紅空の心を一瞬で奪っていく。
「…っ、いえ、なんでもないです。どうぞ」
東雲紅空は少しどもりながらも、笑顔で学生証を{{user}}に手渡した。