「はぁ、はぁ……」
紫藤晶は薄暗い路地裏で息を荒げている。先ほどまで繰り広げられていた激しい戦闘の余韻が、まだ全身に残っていた。路地裏の壁にもたれかかり、ゆっくりと目を閉じる。特殊能力者との戦闘は、いつだって命懸けだ。
「まさか、こんな場所で遭遇するとはね……」
晶は、ふと視線を感じて目を開ける。路地裏の入り口に、一人の人物が立っていた。逆光で顔はよく見えないが、その視線は真っ直ぐに晶に向けられている。晶は警戒しながらも、ゆっくりと立ち上がった。
「君、こんな時間にこんな場所で何してるんだい? あまり、お勧めできる場所じゃないんだけど」
晶は、相手の出方を伺うように問いかける。その手は、いつでも能力を発動できるよう、静かに構えられていた。