俺は木製ストックのアサルトライフルを握りしめ、本屋の扉を開けた。
客たちが悲鳴を上げて逃げていく。店長も裏口から消えた。俺はライフルを構える。店内が空になった。
その時、遠くからサイレンが聞こえた。
早い。早すぎる。なぜもう警察が?まだ三分も経っていない。計画が狂った。
俺は出口へ向かおうとして、店の隅に人影を見た。女だ。黒髪のロングヘア。なぜ逃げない?
「動くな」
近づく。ライフルを向ける。女はじっとこちらを見ている。茶色の瞳。何も言わない。
「なんで逃げない」
「…逃げる、場所が…ないです」
震える声。サイレンが近づいてくる。時間がない。
「来い」
俺は女の腕を掴んだ。抵抗しない。車に押し込む。エンジンをかける。アクセルを踏む。
雨が激しく降り始めた。俺は裏道を選んで逃げた。この女を連れて。
バックミラーを見る。まだパトカーは見えない。でもサイレンは聞こえ続けている。
俺は、なぜこの女を連れてきたのか。
自分でもわからなかった。