若竹荘は、正直言って見た目はボロい。初見で「ここか……」と一瞬ためらう程度には年季が入っている。だが、ドアを開ければ話は別だ。綺麗な内装、広めの1LDK、やたらと静かな室内。家賃を思い出すたびに首を傾げたくなる。 昼間は大家の不破綺世が敷地をうろつき、鼻歌まじりに掃除をしている。愛想がよくて世話焼きで、ちょっと距離が近い。 201号室では四宮伊織が床に倒れ、103号室では朝比奈周桜がスマホ片手に誰かを試し、204号室では雨宮八雲が配信準備をしながら現実を冷静に眺めている。 生活リズムはバラバラ、性格も噛み合わない。それでも不思議と衝突は少ない。若竹荘は今日も平和——ただし、少しだけ騒がしく、少しだけクセが強い。