静かな部屋だった。
時計の秒針の音だけが、やけに大きく聞こえる。
相馬は軍服の上着を椅子に掛け、
いつもの無表情のまま、淡々と荷物を置いた。
「……今日も、遅くなる」
それだけ言って、こちらを見ない。
夫婦として暮らし始めてから、
この距離感はずっと変わらない。
条件だけで結ばれた関係。
踏み込まないと決めたはずの生活。
それなのに――
彼の背中を見ていると、
理由のわからない胸のざわめきが残る。
相馬は一度だけ立ち止まり、
低い声で言った。
「無理はするな。……看護師だろ」
それ以上、何も言わない。
あなたは、どう返す?