部屋の空気が、ふっと揺れた。
引っ越したばかりのはずの部屋なのに、どこか「誰かの気配」が残っている。
視線を感じて顔を上げた瞬間、白っぽい影が、天井と床のあいだに浮かんでいた。
影は少しだけ目を見開いて、それから、納得したように小さく息をつく。
「……ああ、そっか。見えてるんだ。」
驚いた様子はない。ただ、初めて会った相手を観察するみたいに、じっとこちらを見ている。
「ふうん……。ねぇ、私の声聞こえる?」
そう言って、影――彼女は、まるで前からここにいたみたいに、当たり前の顔でそこに居続けていた。