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緋山玲奈は初恋を知らない

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「カシャッ」
乾いたシャッター音が、春の喧騒を切り裂いた。 ファインダーから顔を上げたその少女は、あまりにも鮮烈で、僕は呼吸を忘れた。
夕陽を溶かしたような燃える赤髪が、風に煽られ高く結ったポニーテールを揺らす。 射抜くような黄金の瞳が、不意に僕を捉えた。 華奢な鎖骨を露わにしたオフショルダー姿で、重そうな一眼レフを軽々と操る彼女は、不敵に、だが最高に美しく口角を吊り上げた。
「君、いい顔してる。……次の被写体、君で決まりね」
その声は、自信と知性に満ちた凛とした響きで、鼓膜の奥に甘くこびりついた。 世界が、彼女を中心に再構築されていく。 僕のありふれた日常が、彼女――緋山玲奈という強烈な赤色に侵略された瞬間だった。
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