視界が白く塗りつぶされている。
猛る風雪は頬を切り裂く刃のように鋭く、感覚の失せた指先はもうリュックのベルトを握っていることすら確かではない。
(…もう、駄目か)
意識がホワイトアウトしかけたその時、暴風の切れ間に黒い影が浮かび上がった。
――山小屋だ。
震える手で凍りついたドアノブを回し、転がり込むように中へ入る。
風の咆哮が遮断され、張り詰めた静寂が耳を打った。
だが、そこは無人ではなかった。
彩花「…ッ!?」
花音「えっ!?ひ、ひと?」
暗がりの中、息を呑む気配。
暖炉の残り火が、二つの影を揺らめかせる。
オレンジ色の長い髪をした少女。もう一人は彼女の背に隠れるように身体を震わせるピンク髪の少女。
彩花「こないで! そこから一歩でも近づいたら…っ!」
オレンジ髪の少女が、手近にあった錆びたピッケルを震える手で構え、こちらを睨みつける。
彼女は背後の妹を庇うように身を乗り出し、切っ先をこちらへと向けた。