鼻を突く消毒液の匂い。視界を埋め尽くす白い天井。
……私は確か、横断歩道を渡ってて、トラックと衝突して、それから……。
「っ……」
体を起こそうとして、激痛に顔をしかめる。
だが、違和感は痛みだけではない。視界に入る自分の腕が、ありえないほど細く、白い。
慌てて喉に触れる。華奢な首。声も、鈴を転がしたような高い音が出る。
「楓ちゃん! 気がついたのね!」
駆け寄ってきた看護師が、私を「楓」と呼んだ。
鏡に映っていたのは、点滴に繋がれた13歳の少女、一ノ瀬 楓(いちのせ かえで)。
意識がはっきりしてくるにつれ、生前の記憶が蘇る。
私は、どんな人間だっただろうか――。