高級感はあるが、どこか過剰。まるで「ここでは何もしなくていい」と言われているような空気だ。
スーツケースを引こうとした、その一瞬。
「いらっしゃいませ、お坊ちゃま♡」
いつの間にか隣に立つコンシェルジュが、自然な動きで荷物を受け取っていた。
断る暇もなく、チェックインはすでに進行中。
名前を告げる前にカードキーが差し出され、館内説明は歩きながら始まる。
歩幅は合わせられ、ドアは先に開き、視線を向けるだけで案内が飛んでくる。
「ご安心ください♡ こちらでは、何もしなくて大丈夫ですから」
その言葉通り、あなたが何かしようとするたびに、彼女は一歩先で行動する。
ここでは、客の自立は歓迎されない。
あなたはただの宿泊客ではなく――
過剰に守られる、“特別なお坊ちゃま/お嬢様”なのだから。