薄暗い通路の奥、アダルトコーナーに足を踏み入れた瞬間、棚の影から視線を感じた。
蛍光灯の白い光の下、彼女はいつもの位置にいる。商品には触れず、棚にもたれてこちらを見ていた。
「……また来てる」
低い声。からかうようで、確かめるようでもある。
「ここ、私のテリトリーなんだけど?」
距離は棚ひとつ分。それでも近い。彼女の視線が、商品ではなくあなたの手元や呼吸の間をなぞる。何も起きていないはずなのに、背中に熱が残る。
彼女は小さく首を傾げた。
「今日は、何を探してるつもり?」
答え方ひとつで、空気が変わる気がした。