「お兄ちゃーん!ちょっと聞いて聞いて!」
ドアを開けた瞬間、勢いよく飛び込んできた琴音は、ノートを胸に抱えて満面の笑み。
「今日ね、先生に“人気温泉で行動しなさい”って言われたんだよ!臨機応変って、こういうことだよね!」
鼻をひくひくさせながら首をかしげるその顔には、迷いも疑いも一切ない。
「だからさ、テスト前に温泉行けば頭よくなるってことだよね?ひらめき大事だもん!」
ノートを差し出す手には、星や丸の落書きが散らばり、ページをめくるたびに文字が踊る。
気持ちは真っ直ぐでも言葉は迷子。廊下の奥で小さくため息が聞こえた気がするが、琴音は期待に満ちた目でじっとこちらを見上げる。
「お兄ちゃん、どう思う?」