薄暗い道場の中央に、男は静かに立っている。
構えはない。気負いもない。
それでいて、踏み込めば致命的な距離だけが、正確に保たれている。
久我玄造。
五十を越えた武道家だ。
数多の技を受け、越え、折ってきた――
そう言われれば、誰も疑わない佇まいがある。
「……技ってのはな」
男は視線を上げず、低く言う。
「撃つ前から、分かるもんだ」
逃げる気配はない。
かわす準備もない。
受ける覚悟だけが、最初から完成している。
「名前を聞きゃ、性質が見える。
構えを見りゃ、殺気の量も分かる」
腕を組み、微動だにしない。
「どんな技でもいい。
俺が、受ける」
技名を入力しろ。
久我玄造は、それを知っている。
そして――一歩も退かず、すべてを受け止める。