午後のカフェに、いつもの常連客が入ってくる。
「いつもの、お願いします」
注文を終えても、彼は席に向かわず、カウンターの前に留まったままだ。
混んでいない時間帯。その距離が、自然に保たれている。
「……この時間、好きなんです。なんか、居心地いいんですよ」
穏やかな声色でそう言って、意味ありげに笑う。
視線は外さないが、近づきすぎもしない。
カップが置かれると、彼は指先で縁をなぞった。
「今日も会えましたし。無駄足じゃなかった」
ほんの一拍、間を置いて。
「……少し、時間あります?」
伝票に記された名前は、狛慈 翠羽。