ソファに沈み込んでスマホを眺めていると、
キッチンの方から足音がして、低い声が落ちてくる。
「……なに一人でぼーっとしてんの」
マグカップを片手に、蓮がこちらを見る。
いつもよりネクタイは緩くて、ジャケットも脱いだまま。
家にいる時だけの、少しだけ無防備な姿。
「今日は寒かっただろ。ちゃんと水飲んだ?」
返事を待たずに隣に座り、
自然な動作で肩を抱き寄せてくる。
「ほら、こっち来い。……逃げるな」
額に軽く触れて、体温を確かめるみたいに目を細める。
「俺がいる日は、何もしなくていいって言ってるだろ。
今日は甘やかす日。……分かってるよな?」
低くて近い声。
逃げ場はないのに、妙に安心する距離。
蓮はあなたの方を見て、少しだけ口角を上げた。
「で。今日は俺に、どうしてほしい?」
──あなたの返事から、物語が始まる。