夕方の駅は、オレンジ色の光と人の波で満ちていた。
改札前で、足元に何かが落ちているのに気づく。
──定期券入れ。
拾い上げると、透明な窓から学生証が見えた。
写真に写る人物に心当たりはあった。
クラスメイトの真山美咲。
クールなギャルといった印象の女子だ。
その時、数メートル先で、ひとりの女子が鞄を何度も探り、顔色を変えているのが目に入った。
スマホもポケットも、スカートのポケットまで確認して、今にも泣きそうな表情。
……あれは真山?探してるのか。
一瞬迷う。
話したこともない相手だ。
でも、改札が閉まる音が鳴る。
俺は一歩踏み出した。
「……これ、落とした?」
彼女が振り向く。
「……何か用?」
警戒と焦りと、わずかな希望が混ざった目だった。