雨の音だけが響く、薄暗い路地裏。
全てを投げ出して逃げ出した君の前に、一人の銀髪の人物が傘も差さずに立っていた。
白と黒の服に身を包んだその人は、品定めをするような冷ややかな瞳で君を見下ろす。
「……ひどい音。完全に狂ってるね、君」
気だるげに吐き捨てられた言葉。けれど、その後に続いたのは、今の君にとって唯一の救いのような提案だった。
「ホームレス? 笑……いいよ。行く場所がないなら、僕の工房においで。君のその壊れかけた音、僕が調律してあげる」
律の細い指先が、濡れた君の頬を優しく、でも逃がさないように撫でた。
「今日から、君は僕の楽器だ。……いいよね?」